おらほの最上川学 五百川峡谷編 No.9

旧明鏡橋と周辺見学会「明鏡橋を見に行こう」

ご報告と見学ルートのご紹介

主催/朝日町エコミュージアム案内人の会 
共催/NPO法人朝日町エコミュージアム協会 朝日町教育委員会

 

 

 明鏡橋とその周辺は、選奨土木遺産の旧明鏡橋をはじめ日本初の旧石器発掘地や最上川ビューポイント、桜公園など多くの史跡や眺望を歩いて楽しめるスポットです。
 2007年10月28日に、エコミュージアムガイドや地元栗木沢区長志藤正雄氏の案内のもと、橋の写真家 平野暉雄氏(『橋を見に行こう』著者)をゲストに見学会を開催いたしました。ここでは、その報告とあわせて当日訪ねられなかった見学地についてもご紹介いたします。ぜひ、参考になさって直接訪ねていただけましたら幸いです。

  ※平野輝雄氏プロフィール


地図のPDFファイルはこちら

 




 栗木沢区長 志藤正雄氏


開講式
 幸いなことに、前日の大雨とは打って変わって気持ちのよい青空。集合場所の栗木沢公民館には、地元をはじめ山形市や米沢市から20人の皆さんが参加して下さいました。ボランティアスタッフや東北芸術工科大学の学生5人も博物館実習をかねて協力して下さり、楽しくにぎやかな見学会が始まりました。

 

山形県指定“最上川ビューポイント”

 はじめに最上川ビューポイントから遠景の旧明鏡橋を眺めました。いくつもの中州、白波のたつ激流、色とりどりのカヌー、りんご園そして遠くに旧明鏡橋。橋写真家の平野氏も熱心に撮影なさっていました。

※山形県が「母なる川・最上川」への関心と愛着を深めることを目的として、最上川の良好な眺めを得られる地点を公募し、県内外から寄せられた258件129ポイントの中から、 最上川ビューポイント選定委員会(委員長:横山昭男山形大学名誉教授)により選定された、11景(「選定委員の推薦する地点」:1地点含む)のことをいう。
 ※ビューポイント写真

 

 

 

全国ベスト3の瀬“カヌーランド”

 瀬が連続するここ五百川峡谷(いもがわきょうこく)は、カヌー愛好家にとってたまらない流れとなっています。特にカヌーランドのある面白の瀬(通称“タンの瀬”)は、フリースタイルカヤックを楽しむ人達にとって全国でも3本の指に入る有名な流れとされ、大きな大会がたびたび開かれています。(詳しくは宝ノートNo0605
 この日も、まだ増水が納まらない激流の中、多くのカヌー愛好家がくるくる回転したり、留まったり、多くの技を楽しんでいました。鮮やかなカヌーの色も自然に映えてきれいでした。
明鏡橋とカヌーの風景/堀敬太郎氏撮影
最上川今昔「滔々と」/山形新聞記事

 

 

 

 
県内一のかまど産地だった 面白の岩取り場跡
 ところで、この大きな瀬や下流の流れは人の手もかかってでき上がったようです。
 案内して下さったエコミュージアムガイドの堀敬太郎さんによると、明治時代から昭和20年代まで、煮炊き用のかまどや養蚕用の暖炉の岩をここから切り出し、舟で運搬、販売していたのだそうです。当時は県内一の“かまど”産地として有名で年間3000個以上を造り、石職人は18人も働くほど大繁盛したそうです。その頃は、こちら側を川は流れておらず、昭和40年の羽越水害から現在の流れになったとのこと。
 
よく見ると、足元に四角く切り出した跡がいくつか見受けられましたが、水の下にはもっと本格的な跡が残っているのだそうです。

岩を取った跡
養蚕用の暖炉  志藤富男さん所有(大谷)

写真提供/堀敬太郎さん

 

日本一心和むデザイン 選奨土木遺産“旧明鏡橋”
 川沿いにおいしそうなリンゴの実りを横目に歩くと、架橋70周年の旧明鏡橋が日光に照らされてとてもきれいな姿を見せてくれました。選奨土木遺産に認定されたこの橋のデザインについて平野氏は「開腹型アーチ橋では日本一心和むデザイン」とお墨付きを下さいました。参加者一同、納得した様子で感嘆のため息をもらしていました。詳しくはエコミュージアムノートNo.0705

※選奨土木遺産
 土木学会では、幕末以降、西洋の近代土木技術が導入されてから第二次世界大戦以前までに造られた土木施設のうち、現存しているものを近代土木遺産と定義。その中から毎年10数件を選奨土木遺産として顕彰している。
 旧明鏡橋は平成18年度に受賞。受賞理由に「美しい鉄筋コンクリートアーチ橋で、開腹部のアーケード形状、高欄の逆アーチ形状等、デザイン的に優れている。」とある。 

 朝日町はりんごの町です
 誰かがりんごロードと名付けていました


 
   明鏡橋の魅力を説明下さる平野氏
   
  最上川中流域のシンボル的な
  存在として親しまれてきました
欄干に埋め込まれた
   選奨土木遺産の認定プレート

 

 

橋上は思い出のデートスポット
コミュニティー情報誌「朝日町新聞」掲載の『明鏡橋物語』No2出合い(談/菅井敏夫 聞き書き/西澤信雄氏)によると、 戦後まだ車が少なかった時代、橋の上は恋人たちが出会うロマンチックな場所だったとのこと。午前中に開催された「思い出語り会」でも、振り返りお話下さいました。また、橋のすぐ近くにお住まいの志藤正雄氏(栗木沢区長)も「夜遅くまで騒がしくて若い私はドキドキして眠れなかったものだった」とお話し下さいました。
 
 おっかなびっくり

平野氏が絶賛する逆円弧模様の高欄 

 

 

橋の上から見える 国内最長の“舟道”遺構
〜世界遺産登録に向けた資料提出について〜
 この日は増水していて見えませんでしたが、橋の上から二つの大切なものを見ることができます。
 一つは、舟道です。五百川峡谷には米沢藩とその御用商人西村久左衛門が円滑な舟運を目的に開削し、結果最上川舟運に革命的な発展をもたらした歴史があります。
これまで、開削した場所は滝になっていたいくつかの難所部分とされてきました。(詳しくは宝ノート No0602No0604
 ところが、佐藤五郎氏(米沢中央高校副校長)と生徒らによるGPS測量調査により、上郷ダム上流白鷹町から朝日町にかけての川床が10kmにわたり箱状に掘削されていることが分かったのです。(新聞記事 2007.11月発表)また佐藤氏は、目視だが同じような舟道が峡谷の終わりの左沢まで続いているとし、山形県ではこれを国内最長の遺構として文化庁に世界遺産登録に向け提案資料を提出しました。(新聞記事)
 その確認された上流部の舟道と同じような跡を明鏡橋の眼下にも見ることができます。地元でもかつて「たがねの跡がある」とおっしゃる年輩の方がいらっしゃいました。関連記事

 

 川岸が急に深く削り込まれているのが分かります。このような水路が峡谷の特に上流部と下流部に続いています。(別の日に撮影)
 


橋の上から見える “最上川で一番きれいな水”(源流部を除く)
 そしてもう一つは、最上川で最もきれいな水です。佐藤先生は、長年生徒たちと最上川を下り水質調査を繰り返してきましたが、瀬の連続する五百川峡谷は上流部の置賜盆地で汚れた水を浄化する“心臓部”とお話下さいました。特にこの明鏡橋付近は最上川全体(源流部を除く)で最もきれいな水質に回復するポイントなのだそうです。(詳しくは宝ノートNo0606)
  「ここは名のごとく“明鏡止水”
菅井敏夫氏も『明鏡橋物語』No7誇りでお話下さってます。

 

 

 

 


  参考写真 (朝日町HPより)

日本初の旧石器発見地“大隅遺跡”

 橋を渡りきりると日本で初めて旧石器の存在を知らせた「大隅遺跡」です。昭和11年(1936)大竹国治が旧明鏡橋工事の際に出て来た石片をただの石ではないと直感し、屋根裏に保存していたものを、昭和24年(1949)菅井進氏が旧石器であるとの確信を持ち、同人誌『縄文』に発表しました。このことは日本での旧石器第一発見とされている群馬県の岩宿遺跡よりも早い発表だったのです。(詳しくは大隅遺跡

 

 

 

 

朝日町で最も古い“金毘羅山碑”
 見学会では訪ねられませんでしたが,大隅遺跡から国道下を横切り東へ進むと集落中程に“山神社”が。そして集落奥には五百川三十三観音の一つ“大巻観音地蔵堂”があります。ここには朝日町の中でもっとも古い寛永六年(1629)造立の金毘羅山碑(象頭山金毘羅大権現)があります。舟運時代に関わりある職業の人達が祀ったもので、栄えた時代を表す石碑なのだそうです。(詳しくは宝ノートNo0604)“象頭山”の石塔も含めると朝日町には21基も造立されています。参考/『朝日町の石佛』(朝日町長寿クラブ連合会発行)

 

山神社(大隅) 

観音地蔵堂

観音地蔵堂

 

観音地蔵堂の金毘羅山碑 
 

 

 

旧明鏡橋東側全景

 国道287号線の新しい明鏡橋を渡ると、旧明鏡橋の東側全景を少し見下ろす視線で眺めることができます。近頃は撮影なさる方をよく見かけるようになりました。

 

 



桜公園から見える“美しい朝日町” 

 明鏡橋近くの高台(上の山)にある桜公園は、地元の皆さんに整備され憩いの場所となっています。頂上には東屋も整備され、見事な景色を眺望しながらほっとする時間を過ごすことができます。 また、ここは山神社をはじめ多くの石塔が造立されており旧時を彷彿させる場所です。
 案内して下さった区長の志藤正雄さんは「かつては青年会がやぐらを立てて盆踊りも行っていた場所。これからは参拝しやすくするためにも階段やトイレなどの整備や、町の花“ひめさゆり”を育てて、地域の人や訪れる方の憩いの場になって欲しい」とお話下さいました。

 

桜公園全景(木立のある所)
数分程登ります
眺めの素晴らしさにうっとり

 

 

 

 

 

 新旧二つの明鏡橋
    と明神山(右)    

 

 

 

 

 

和合根子田山とりんご園

栗木沢・大谷方面

 

 


山神社


石塔見学

 

 

 

 

 

 
舟運と風邪の神様“二渡神社”
 桜公園を下りて旧国道から少し入った所に二渡神社があります。自然石がご神体として祀られ、舟運の守り神として、風邪や百日咳の神として地区民に信仰されてきました。ここには朝日町で二番目に古いとされる絵馬「繋ぎ馬図」や、にわとりが描かれた絵馬が奉納されています。

 





にわとりの絵馬 (『大谷郷』より抜粋)

繋馬の絵馬(『大谷郷』より抜粋)
 

 

 

町指定文化財“無量庵の阿弥陀如来座像”

 二渡神社から農道を入って栗木沢公民館の裏手に出ると、大谷永林寺の末寺無量庵があります。ご本尊の阿弥陀如来の座像は町指定文化財に指定されています。その気品のある顔立ちにみなさん見入っていました。また、境内には三基の青面金剛像など多くの石仏が立っています。山門の大もみじは色づきはじめ境内を美しく彩っていました。

※青面金剛
 庚申講の神。庚申の日の夜、眠ると体内から三尸虫が出て天帝にその罪状を告げられ寿命が減るので,その日は長生きや幸運のために近所の人が集まり青面金剛を礼拝し夜通し歓談したという風習。   

 

無量庵


大もみじ

 

阿弥陀如来座像『大谷郷』より抜粋

 


多くの石仏


青面金剛像の下に見つけた三猿


どこまでもまっすぐなご神木

 

   
試飲自由なワイン城(朝日町ワイン)

 見学会では立ち寄れませんでしたが、旧明鏡橋から歩いて10分弱のところには、朝日町の誇る“朝日町ワイン”の工場があります。併設のワイン城では、製造ラインの一部やぶどう畑を見学することができます。もちろん試飲や購入もできます。ぜひお立ちより下さい。

 

ワイン城
ぶどう園見学


 

 

閉講式
 最後にお一人ずつ感想をお聞きしました。町内の方は「身近にこんな素晴らしい所があるとは知らなかった」町外の方は「朝日町がますます好きになった」などのあたたかな感想をいただきました。
 ゲスト参加して下さった平野暉雄さん、栗木沢区長の志藤正雄さん、ボランティアスタッフ、そして参加者のみなさんに心から感謝申し上げます。(2008.1 安藤竜二記 写真撮影/高橋茉莉さん(東北芸術工科大学4年生)

 


    

   

 

 
     見学のワンポイントアドバイス

・歩いて訪ねる際の駐車場はカヌーランドをご利用下さい。 
・全ヵ所を一日で訪ねたい場合は車の利用をお勧めします。
  橋下から橋上には普通車は通れませんので戻って下さい。
・昼食は国道沿いに飲食店が数軒ございます。
  天気の良い日は弁当持参で桜公園もお薦めいたします。
・社寺について拝観なさりたい方はエコルームまでお申し込み下さい。
・ぜひエコミュージアムガイドをご利用下さい。エコミュージアム案内人の会
・参考資料、文献はエコルームで購入できます。
  『大谷郷』『大隅遺跡の旧石器』『お江戸でござらぬ大谷でござる』など

  

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